葬儀業界へ飛び込む国立大生へ
私には少し年の離れた知人がいまして。
彼は地方国立大を今月卒業します。
そんな彼から来月から葬儀業界へ飛び込む、と唐突に言われました。
就職活動を経て他業界からも内定をいくつかもらった中、選んだのが葬儀業界。
大学で学んだこととは全く畑違いの業界。
なぜ?
この疑問を彼にぶつけると、こう答えました。
「同級生の病死をきっかけに、死に向き合う仕事をしたくなった。」
とのことでした。
いろいろ話したいことはありましたが、
結局、以下の話をしました。
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私の家では、身内に不幸があったときに依頼する葬儀屋さんがすでに決まっています。
20年ほど前に祖父が亡くなった際にお世話になった葬儀屋さんです(その時は電話帳で目についたところ、という感じでした)。
そして祖父が亡くなってから10年たち、父が亡くなりました。
その時も
「10年前の祖父の時もお世話になったから、ここにしよう」
という、いわば消去法的な選択に過ぎませんでした。
しかし、その時に担当していただいたスタッフの方の対応が大変丁寧で、
なんというか心にくるというか、遺族の気持ちに寄り添ってくれる、そんな方でした。
戸田さんといいます。
戸田さんにしていただいたことの中で一番の感動は、納棺の儀の時でした。
仏様に白装束を着せ、棺に入れる儀式です。
正直、自分にとって父の死は悲しかったものの、日ごろの不摂生がたたった結果だったし、
身辺整理も不十分だったことも重なり、
自分としては100%悲しめなかった部分がありました。
自分が喪主を務め、多忙だったのもあったと思います。
戸田さんは儀式の間、丁寧に装束を着せていくのはもちろんのこと、
父に、しっかりと語りかけ続けてくれました。
まるで私たち家族の気持ちを代弁してくれているかのようでした。
私たち家族は、父に感謝していること
私たち家族が、父に無事にむこうの世界にたどり着いてほしいと願っていること
むこうの世界でも幸せになってほしいこと
いつの日か、必ずむこうの世界で再会できること
戸田さんの言葉を聞いているうち、涙が止まらなくなっていました。
自分が喪主として、気丈にふるまわなければならない、とどこかで無理をしていたのだと思います。
父が亡くなってからこれまで数日、初めてその悲しみと真正面から向き合えたのです。
戸田さんのおかげで
父に向かって「今までありがとう」
ということができました。
それ以来、戸田さんのいる葬儀屋さんだけにお願いしています。
(ここ数年の間に父方の祖父母も亡くなり、その時ももちろんお願いしました)
戸田さんに担当していただいたのは一度だけでしたが、
戸田さんの教えが息づいているスタッフの方々のいる葬儀屋さんですから、
自分には他の葬儀屋さんにはお願いするという選択肢は出てきません。
そんな、伝説の葬儀屋さんになってよ!
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こんな話を彼にしました。
彼の仕事に対するひたむきさは折り紙付きです。
きっと、立派な葬儀屋さんになると思います。
できれば、伝説になるくらいに!
そんな期待を寄せながら、彼にエールを送りたいと思います。